チーズと泡盛
ラ・コールで年に4回開催されるフランスチーズ鑑評騎士、國場百合子さんを囲んでとサブタイトルされる「おいしいチーズを楽しむ会」の7回目は、チーズと泡盛で2006年10月29日の日曜日に催された。
チーズと泡盛は一見ミスマッチの組み合わせのようだけど、沖縄が世界に誇る名酒・泡盛とチーズは思いがけず多くの共通点を持っているそうだ。永い歴史と伝統に育まれた発酵食品であることや熟成によって成分の変化が複雑な味わいを出すことなどがある。今回は普段は5種類の泡盛やカクテルと6種類のチーズのマリアージュを楽しむことができた。
まずは、食前酒代わりに泡盛カクテル。泡盛は請福の25度を使用。泡盛30mlに対してトニックウォーター100mlを加え、シークヮーサーを半分に切ったものを絞りグラスに入れるだけなので家庭でも手軽に作ることができる。とても爽やかで飲みやすい。ただ飲みすぎる危険性はあるかもね。トニックウォーターがなければ最近よくスーパーで売っている炭酸入りのミネラルウォーターでもよさそうだな。
最初の料理は、沖縄健康野菜とテリーヌ・島らっきょうのピクルス添え。これは見た目がとても鮮かで美しい逸品。うりずん豆、ハンダマ、カボチャ、ホウレンソウ、ピーマン、オクラ、キャベツなど9種類の野菜が詰まっていてとても上品で爽やかな味。とても家庭では作れそうにないすばらしいメニューだなぁと思う。島らっきょうのピクルスも初めてだけど、浅漬けとはまた全然違う味。控えめな酸味と甘みにシャキとした食感も残っていて美味い。
イタリアのワインは、ヴェルデッキオ クラシコの白とスペインのミヨーネロゼ。ヴエルデッキオは右の写真のようにボトルがちょっと変わったカタチをしていてデザインも楽しい。どちらも飲みやすいワインで今回の料理にはぴったりな感じだ。ゴマたっぷりのパンも香ばしくていいね。
2品目は、近海魚と貝類の泡盛を使ったアクアパッツァ アーサのソース。これも見た目にも食欲をそそる一品。様々な魚介のエキスの混じったアーサソースも泡盛とのコラボで潮臭さは全くなく爽やかな香りが食を進ませてくれるようだ。先日まんぐろーぶという店でこれと似たような真鯛のアーサソースをいただいた。個人的にはその時の魚はカリッと素揚されていてとてもいい食感だったので、これもそうだったらもっと食感も楽しめていいのではないかなぁとは思ったりはするが、それより随分と洗練されていると思う。残ったソースでパンを食べても美味い。
泡盛は、米をこうじにした米麹と水だけを原料に全量一度に仕込んで発酵させ、単式蒸留機で蒸留する酒。国内最古の蒸留酒で基本的には600年前から同じ製法を守っている。アルコールや各種添加物を一切加えない100%天然醸造なので、飲み口は爽やかで酔い覚めもスッキリとした芳醇な香りと深いコクがある。製法上の大きな特徴は、世界的にも類のない黒麹菌を使っていることで、黒麹菌はクエン酸を作り出し、雑菌の繁殖をかなり抑えられ、気温の高い沖縄ではモロミを腐敗させることなく良質の泡盛を作ることができること。沖縄でこのように作られた泡盛にのみ琉球泡盛(以前は本場泡盛の表示もあったけど、今はこちらに統一される傾向にあるようだ)の名称を使うことができるそうだ。
さて、いよいよ今日のメインでもある泡盛とチーズのプレート。まずは泡盛。
1.請福25度新酒(請福酒造)減圧蒸留で作られた淡麗でフルーティな泡盛。水のようなクリアですっきりとした飲み心地。サキヌマーにはちょっと物足りないかな?
2.常盤30度一般酒(伊是名酒造)米の香ばしいロースト香が印象的な泡盛。甘みを割と強く感じる。香りもいい。
3.春雨ゴールド30度古酒(宮里酒造)しっかりと骨太の男性的な泡盛。これも香りがよく花に抜けていく感じ。今日の中では2番目に気に入ったかな。
4.暖流30度古酒(神村酒造)樫樽貯蔵でウィスキーのような風味。これは昔よく行った焼き鳥屋で出ていた泡盛なので懐かしい。ウィスキーのような色と香りは独特なもの。
5.珊瑚礁40度10年古酒(山川酒造)10年の歳月が作り出すまろやかで芳醇な味の泡盛。40度と強い酒だけど、それを感じさせないまろやかな甘みがとてもいい。さすがに喉を通る時は度数の高さを感じさせてくれる。香りは強いが、シードルのようなリンゴの香りが口中にひろがり、文句なく今日一番美味いと思った。味わいながらじっくりと飲みたい泡盛。
(写真は左から右にかけて1〜5だけど、写り込みがあるので色は余りはっきりしないね。)
チーズは、12時から時計回りに、1、味噌漬けモッツアレラ、2.サンタンドレ、3.ロックフォールAOC、4.ミモレット、5.フィオーレ・サルドDOP、6.ピンザ・アワモリ。
1.味噌漬けモッツアレラは、イタリアの牛乳製のフレッシュタイプのものでラ・コールで味噌に3日程浸けたもの。チーズも味噌も同じ発酵食品なので相性はとてもいい。ただし甘い味噌でつけない方がいい。これは泡盛はもちろん清酒にもよくあう。漬け具合はちょうどよくタンパクなモッツアレラに甘さと塩気が加わり、水気のあるかまぼこのような風味。
2.サンタンドレは、フランスの牛乳製の白カビタイプ。MGが75%と高くバターのようにとろりとした味わいは泡盛に甘みを加えてくれる。
3.ロックフォールAOCはフランスの羊乳製の青カビタイプ。クリーミーな青カビの塩味と泡盛の組み合わせはとてもいい。これは珊瑚礁などの力強くもまろやかな泡盛がよくあいそうだ。
4.ミモレットは、フランスの牛乳製でセミハードタイプ。今回のは一番食べ頃な18カ月熟成のものでカラスミのような味わいのもの。これは泡盛全般にあうだろうし、日本酒やビールとも相性がいいかと思う。
5.フィオーレ・サルドDOPは、イタリアの羊乳製でセミハードタイプ。羊乳の甘みとスモークされた香りがいいチーズ。
6.ピンザ・アワモリは、おなじみ中城のはごろも牧場のシェーブル。それを泡盛でウォッシュした究極の泡盛とチーズ。今回のは1カ月熟成で、先日食べた2カ月熟成との違いが楽しみだった。2カ月熟成のようにとろぉりとした豆腐ようの感じはしないけれど、シェーブルらしさを多く残し爽やかな酸味と甘みが強調されながらもまろやかでとても美味い。1.5カ月位に熟成したものも試してみたいな。
デザートは、泡盛のトライフル 旬のフルーツを添えて。トライフルって聞き慣れないなぁと思って調べたら、ハリーポッターにも登場するイギリスではとってもポピュラーなお菓子らしい。プレーンなスポンジケーキに生クリームとカスタードクリーム、いちごがいっぱい詰まったフレッシュなケーキとかある。カリッとした表面ととろぉりとしたクリームの甘さがとてもいい。泡盛は?と思いつつ食べると泡盛というかお酒を使ったお菓子だってのがよく分かる。リキュールとはまた違って香りが主張してる訳ではなくてコクのようなものがずっしりと感じられて美味い。ドラゴンフルーツやキウイとかの組み合わせもとてもいい。
全体として私にはちょっと量が少なめだったけど、一度にこれだけの泡盛とチーズの組み合わせを楽しめてのはとてもいい経験だった。チーズと言うとワインとすぐに結びついてしまうのだけど、いろんな泡盛と試してみるのもいいね。それよりさらに泡盛に合せてチーズを選ぶというのもいいかなと思ったりした。チーズとワインの組み合わせのポイントは、生産地の同じもの同士、性格の似たもの同士(熟成が同じ)、性格が反対のもの同士の3つのポイントがあると国場先生に教えてもらったことがあるけれど、チーズと泡盛にも応用できそうだ。今回で言えば、ピンザ・アワモリが生産地が同じもの同士は相性がいい。石垣でもチーズを作っているので試してみたくもある。ピンザ・アワモリは生産地が同じだけでなく泡盛でウォッシュしているので確かに最強の組み合わせ。欲を言えば使った泡盛との相性はさらにいいかも知れない。ただ必ずしも、こだわることはなく自分で最良のものをみつければいい訳で、今回のもどれがどれに一番ということでもなくて基本的にはどれの組み合わせも悪くないと思う。貴重な体験だったね。
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