魅惑のスペイン
ラ・コールで年に4回開催されるフランスチーズ鑑評騎士、國場百合子さんを囲んでとサブタイトルされる「おいしいチーズを楽しむ会」の6回目は、魅惑のスペイン。台風の最中の7月9日(2006年)に行なわれた。今回のチーズはどれも素晴らしいものだった。
スペインチーズの分類は、乳種によって分けられていて分かりやすい。緑のスペインと呼ばれる北部一帯では、牛乳製のチーズが多く、12〜19世紀まで羊毛の一大生産地だった内陸部では主として羊乳製チーズが生産され、暑く乾いた地中海沿岸部やカナリア諸島では山羊乳チーズが生産されている。またこれら3種の乳の混乳製チーズはスペイン国内で最も消費需要の高いチーズ。
スペイン料理と言えば、まずはタパス。出されたのは、カタルーニャ地方の焼き野菜のマリネに、パン・コン・トマテ。ガルシア地方の海の幸のサルピコンにタコのパプリカ風味。トルテージャ(スペインオムレツ)、オリーブと野菜のマリネ等々、目にも鮮かで楽しいものばかり。スペイン料理は初めて作るという我妻シェフのタパスはあっさりと上品な味の地中海風。写真が2枚あるのは1皿では盛りきれないのでおかわりしたから。
ワインは、モンサラ・ブリュット(カヴァ)、テルモ・ロドリゲス・パサ(白)、テルモ・ロドリゲス・エレ・セッタ(赤)、それに台風最中に来てくれたと言うことで予定外のシェリー。カヴァはすっきりとした辛口でフルーティな甘さも香りもいい感じ。
テルモ・ロドリゲスは、スペイン各地の最良畑の所有者に協力を求め、醸造、熟成の設備を持ち込んでワイン造りを行うという斬新でユニークな方法をとっている方だそうだ。この方法の最大のメリットは、スペイン全国どこでも、これと思う最上の畑を見出した時に、すぐワイン造りをすることができるということ。
バサは、ルエダの平均樹齢18〜25年のヴェルデホ80%、ヴィウラ15%、ソーヴィニヨン・ブラン5%をブレンドしたもの。酸味は控えめですっきりとした飲み心地。エレ・セッタは、テルモの本拠地リオハ産のもので、フレッシュで上品な感じかな。
料理の方のメインは、黒豚ロース肉の丸ごと香草焼き、ポテト添え。ソースまたは塩、コショーでいただくのだけど、両方を試してみた。ソースも悪くないけど、塩コショーの方が豚の味を引き出しているように思えて美味い。これもお代りしたのだけど、いい塩だとやっぱり塩の方があうね。個人的にはもう少しレア気味の方が好みではあるけど、丸ごとなので部位によって火の通り方が少し違うようだった。
スペインと言えばシェリー。と言う訳でラ・コールスタッフによるベネンシアを使ったデモンストレーションがあった。調べてみたら、ベネンシアドールとは、ベネンシア(細長いひしゃく)を使って樽からワインを汲み出し、グラスに注ぐ優れた技術を持つ人のこと。元来ボデガ(貯蔵熟成庫)で樽内のシェリーの試飲をするときにサンプルを採る仕事をする人のことだったけれど、現在はシェリーのプロモーションで活躍しているのだそうだ。
世界的に活躍した最初の人はフリオ・デルガドで、彼はなんと片手に持った16個のグラスにシェリーを注ぐことができたのだそうだ。見ているだけでも相当難しいのは分かるし、なかなか上手くはいかないもんだね。やってみると言われたのだけど、どう考えても不器用な私にできそうな気は全くしないなぁ。ベネンシアドールという資格試験もあるそうだけど、沖縄ではまだ取得した人はいないらしい。
さて本日のメインは、スペインチーズ。上から時計回りに、ティエルノ、ムルシア・アル・ヴィノ、マホレロ、イディアサバル、マンチェゴ、ヴァルデオン。國場さんが太鼓判を押した通りにいづれも極上の状態ですこぶる美味い。それと國場さんがスペイン大使館にかけあって昨日ようやく入手したというスペインチーズを味わおう!と題されたリーフレットはとても詳しく内容の貴重なもの。
ティエノ(Tierno)はラマンチャ地方の牛、羊、山羊の混乳製。ソフトでクリーミィでクセがなく食べやすい。ゴーヤーのような爽やかな苦味もあるようだ。
ムルシア・アル・ヴィノDOP(Murcia al Vino DOP)は、ムルシア地方の山羊乳製で、山羊はムルシアーノ・グラダイナ種。ヴィノと言う名前からも分かる通り、赤ワインで洗って仕上げる表皮の色と内部の真っ白な対比が美しいチーズ。ねっとりとした食感で爽やかな酸味が口に広がる。ヨーグルトのような風味も感じられた。
マホレロDOP(Majorero DOP)は、カナリア諸島フェルテヴェントゥーラ島産のマホレラ種という山羊乳製。濃厚なミルクから作られる酸味とコクのバランスが絶妙。最初の食感はちょっとサクッとした感じですぐに爽やかな酸味と甘味が口に広がってバランスがとても素晴らしい上品な味。他の人にも一番人気だったと思う。
イディアサバルDOP(Idiazabal DOP)は、バスク地方のラチャ種とカランシャナ種の羊乳製。スモークされていて食べるとスモークの香りが鼻に抜けてスルメやカラスミを思い出すような感じ。口当たりからするとハードタイプのチーズかな?味噌の香りもほんのり感じられる気がしてワインだけじゃなくて泡盛や清酒にもあいそうな感じ。細かく刻んでソーミンタシヤーとかに使ってもいけそうだなぁ。
マンチェゴDOP(Manchego DOP)は、ラ・マンチャ地方の平原で放牧されたマンチェガ種の羊乳だけで作られる。ドン・キホーテにも登場するスペインを代表するチーズ。ラ・マンチャに行ったことがあるけど、丘の上に並ぶ風車と自宅に招いてくれたおじさんが今でも思いでに残る場所だなぁ。チーズは、所々に気泡が見られ、ちょとざらついた感触。食べると滑らかな口当たりでコクがあってとても美味い。赤ワインによくあう。國場さんにはもったいないと言われたけど、おろしてパスタにパルミジャーノの代わりにかけてみたいなとも思った。
ヴァルデオン(Valdeon)は、オオカエデの葉に被われたレオン県の青カビチーズ。本来は牛乳製なのだけど、今回のは山羊乳との混乳のようだ。きつすぎない塩加減でクリーミィ。バターを口に含んだような濃厚なコクもあってすごく美味。シェリーとかにもとてもあうし、バーボンとかの強い酒にもいいと思うな。私はこれでカルボナーラを作ってみたいな。仕上げにはマンチェゴをおろしたものをかけたら贅沢な一品だ。ヴァルデオンを食べたあとに最初のティエルノを食べても対比がおもしろくて美味しかった。添えられていたカリンのジャムとかにもよく合うね。
デザートは、オレンジ風味のプリンとバニラアイス。スペインのデザートはすごく甘かったりするんだけど、このプリンは濃厚で上品な甘さ。
真ん中にオレンジピールが入っていて、香りとわずかな苦味がアクセントになっていてバニラアイスとのバランスもとてもよかった。
料理をお代りしたこともあってお腹も満足なメニューだったし、なんと言ってもチーズが素晴らしかった。これらのチーズの即売も行なわれて、私は、イディアサバル、マンチェゴ、ヴァルデオンを各100g買ってしまったのだけど、あわせて2350円とお買い得だったと思う。もちろんそのまま食べるけど、料理にも使ってみようと思う。
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Comments
yumikoさん、スペインの情報ありがとう。おかげさまで今回もスペインの楽しい話をすることができました。スペイン風のパンも大好評だったのよ。できることならこのセミナーにご招待したかったわ。
Posted by: ユリ | July 11, 2006 09:06 AM
わ~スペインチーズの会だったのですね、行きたかったな~
ずっとリンクさせていただいてます。
百合子さんも元気でやっているし、いい生徒さんに囲まれて最高です。
私がマドリッドでいつもパンにはさんで食べていたのは
マンチェーゴ。
たまにムルシア。ほかのものは百合子さんに聞いて初めて知った次第で。
プリンはお洒落すぎ。
一般的なのはヴァイニーヤといってクリーム状のもの。
セルド(豚)は塩で食べるのが一般的。
オリーブオイルたっぷりなのでそれがソース代わりになります。
スペインも今はきっとチーズもデザートもお洒落に楽しんでるかも。
友人はあんまり変わってないと言いますが・・
マドリッドにいるとカタルーニャ、ガルシアはスペインと
思っていないので、いちどにいろんな地方のお料理が楽しめるのはさすが、日本と思います。
どうぞ百合子先生にもよろしく伝えてください。
また引き続きリンクさせていただきます。
みなさん、よく見てくれてます!
Posted by: yumiko Kahata | July 10, 2006 08:08 PM