研究科5 シェーブル特集
チーズ講座研究科5回目はシェーブル特集。今回はAOCのシェーブル8種類にピンザブランを入れると9種類。AOCのシェーブルは全部で12種で他の3種は食べたことがあるので今回で総てを食べたことになる。今回のは、A・シャビシュー・デュ・ポワトゥAOC、B・プーリニィ・サン・ピレールAOC、C・クロタン・ド・シャビニョルAOC、D・ヴァランセAOC、E・ピコドンAOC、F・シュヴロタンAOC、G・ペラルドンAOC、H・マコネAOC。
フランスのシェーブルは農家(フェルミエ)の数だけチーズがあると言われているほど多種多様なものが作られているが、乳酸菌によって内部から熟成するタイプとチーズの乾燥を防ぐために表面につけた木炭粉や白カビによって熟成してくタイプなどがある。
フランスにおけるシェーブルの一大産地は、ロワール川流域でAOCシェーブル12種のうち6種がこの地域で作られている。それは、8世紀にこの地のポワティでフランス国王シャルル・マルテル率いるフランス軍がサラセン軍を撃破した時、アラブ人が連れてきた大量の山羊と山羊チーズの製法が残ったためと言われている。
今回食べた、シャビシュー・デュ・ポワトゥChabisou de Poitouのchabiはアラブ語のchebli(シェブリー山羊)から来ているのもそのため。
ロワール川流域以外では山間のフェルミエで作られているが、それは牛とは違いどんな過酷な環境にも適応していける山羊の特性を利用したもの。
シェーブルは乳酸発酵によって凝乳させ自然脱水を行なうことにより特有のキメを作り出す。熟成温度は6〜8℃、湿度は80〜85℃で白カビタイプと同じ。これは水分の多いソフトなカードを早く乾燥させるため、他のチーズの種類より熟成湿度が低く(通常は90〜100%)熟成室は風乾室ともいい適度な風を送り込んで水分の調整をしている。
シェーブルの魅力を簡単に書いておくと、
1.乳量が牛の1/10 山羊は1頭当り最大でも1日2リットルしかださない。場合によっては1リットルの時もある訳で、1日に1〜2個のチーズしか作れないことになるのでとても貴重である。
2.ゴーティフレーバー
独特の風味は、脂肪酸が分解してできる遊離脂肪酸・カプロン酸やカプリン酸に由来。
3.爽やかな酸味
シェーブルは乳酸発酵とごく少量の凝乳酵素(レンネット)によって凝乳するが、レンネットが効きにくいタンパク質構造で乳酸発酵が主体のため、酸味がありテクスチャーが柔らかく独特のキメを作り出している。
4.バラエティが豊か
フレッシュタイプから熟成したもの、灰まぶし、ハーブをまとったもの、栗の葉包み。カタチも様々で丸太やピラミッド形、樽栓形などがある。熟成の度合いによってその時々の風味の違いを楽しむこともできる。
5.ダイエット効果
山羊乳は、牛乳に比べ、脂肪球やたんぱく質のカゼインミセルが1/6と小さく消化吸収に優れてる。乳糖が少なく下痢になりにくいこと、人乳と同じタンパク成分(βカゼイン主体)のため、母乳に最も近く代替乳としても利用されている。ダイエット効果で注目を集めている中鎖脂肪酸は、山羊乳には100cc中1g含まれている。これだと1%しか含まれていないのかとも思ったのだけど、チーズ100gを作るには1000ccのミルクがいる訳だから、そうすうると10gが含まれていることになって10%と考えていいのだろうか。
A・シャビシュー・デュ・ポワトゥAOCは、ロワール川流域のポワトゥで作られMGは45%、熟成は3週間〜。(今回のチーズのMGは総て45%)フランスの山羊の80%に当たる3.6万頭がポワトゥ地方にいるそうだ。95%が工場製で5%がフェルミエ製。独特の表面のテクスチャーは、ガマ肌仕上げと呼ばれるそうだ。鍾乳石の表面のようにも見える。味は、塩がしっかりときいてきてしっとりしている。爽やかなな酸味があっておとなしめな印象。最初の頃のピンザブランを思い出させてくれる味かな。
B・プーリニィ・サン・ピレールAOCもロワール川流域のベリー地方の無殺菌乳のシェーブル。熟成は4〜5週間と長め。そのカタチからエッフェル塔やピラミッドとかと呼ばれたりもする。ゴーティフレーバーは抑えられていて塩も控えめな感じでしっとりとしていて食べ易い。しかし、濃密でコクもありとてもバランスのいい印象。後味もいい感じ。
C・クロタン・ド・シャビニョルAOCもベリー地方産で熟成は2週間〜。今までのクロタンの中でも一番美味しいかもと國場先生も仰られていたが確かに美味い。表皮もしっとりとしていて塩より甘味の方をより強く感じ濃厚。くせは少なく食べ易い。木ノ実の風味とコクがある。
D・ヴァランセAOCもベリー地方産で熟成は3週間〜。無殺菌乳で作られている。灰がまぶされているが、これは、殺菌、PH調整、水分調整などの目的がある。上品な香りがして、穏やかな塩味と酸味があり、皮はとろとろで中はしっとりでコクがあってこれもクロタン同様美味い。
E・ピコドンAOCは東部-ローヌ地方産で熟成は3〜4週間。ゴーティフレーバーは強めでピリっとした味。苦味もあるけど、クリーミィでシェーブルらしい味。
F・シュヴロタンAOCは東部のサヴォア地方のもので熟成は3週間〜。塩水でウォッシュした表面は淡いオレンジ色をしていて美しく一見するとシェーブルらしくない外観。ルブロションの山羊版とも言われている。皮はカリッとした歯ごたえで中はとてもクリーミィでまろやか。ちょっとピリっとしたところもある。
G・ペラルドンAOCはミディーラングドッグ地方で熟成は2〜3週間。非常にとろとろでクリーミィ。ロカマドゥールに似ている。塩は控えめで爽やかな風味だけど、穏やかなフレーバーが鼻に抜けていく。オムレツとかに入れても美味そうだな。
H・マコネAOCはブルゴーニュ産で熟成は2週間〜。2005年12月にAOCに認定されたばかりのニューカマー。指サックのようなカタチをしていてかなり小ぶり。65gで903円とちょっと高めでもある。味は塩はややきつめだけど、辛いと言う訳ではなくて、力強いと言えばいいのかな。さらに、クリーミィでコクがあり伸びやかな味。からすみのような印象もある。
ピンザブラン。最近、牧場に料理の鉄人でもある坂井宏行氏が訪れ、個人的には余りシェーブルは食べないと言う彼が試食したところ感激して今度からお店に出すんだそうな。そんな話題には最近事欠かない沖縄唯一のシェーブル。今回のは熟成17日目のもの。上品な味で、わずかな苦味とポロッとした食感がある。私的には3週間を越えた時の外がカリっとして中がとろぉりとしたのが好きだな。
こうやってシェーブルを9種類も食べると、同じ山羊でも随分と印象が違うものだ。一慨にシェーブルが好きだとか、シェーブルは苦手と言ってもどれを食べたかによって随分と印象が変わるだろうなと思う。山羊料理は臭いから苦手と言う人もいるけれど食べた店にもかなり寄ったりするのと似ているかも。
今日のワインは、Schales Silvaner Classic 2001 Rheinhessen。すっきりとした味わい。
そして、ローストシェーブルのサラダ。シャビシュー・デュ・ポワトゥAOCを使用。カリッとしたパンととろりとしたチーズに野菜のマッチングが絶品。ドレッシングはクルミオイルとオリーブオイルが1:1でレモン汁が加えてあって酸味もいい感じだった。パンはいつものように宗像堂のもの。
今日のテーブルディスプレイは、藍色を基調にした和風ティスト。布、陶器、ガラスと異なるテクスチャーが同系色で爽やかにまとめられていた。この陶器の魚は水に浮ぶので水盆にいれても涼やかな雰囲気を作ってくれるし、ダイソーで100円で売っていたりするので手軽でいいね。
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Comments
うちはテーブルコーディネイトをする前に、テーブルにあるものを片付ける必要がありますねぇ(^^;
Posted by: rio | June 28, 2006 11:53 AM
私のテーブルコーディネートは「お金をかけずにかっこよくディスプレイする」こと。100円ショップよく利用しています。
Posted by: ユリ | June 28, 2006 10:59 AM