研究科3 乳種の違い
チーズ講座研究科3回目のテーマは乳種の違い。今回のチーズは、プロッチュAOC、リコッタ、ヴァルデオン、ロックフォールAOC、トム・デ・ボージュAOC、オッソ・イラテティAOC、フロマージュ・ド・シェーブル・タランテーズ、それとピンザブランのウォッシュと8種類!見ただけで美味しそうなチーズがずらり。その前にまずは今日の講義から。
原料乳:
チーズに使われる原料乳には、主として牛乳、山羊乳、羊乳、水牛乳、それらの混乳があり、他にもチベットのヤク乳や、ラクダ乳などもわずかにある。馬の乳はチーズには不向きで馬乳酒とかに利用されることが多いようだ。また豚は、赤ちゃんをたくさん産むのでチーズ製造にする程の量がないのだけど、反芻う動物ではなく、また雑食性なので実験で作ってみてもうまくチーズができないそうだ。人間の乳でも実験の結果では巧くは作れないらしい。
原料乳に利用される獣種の条件としては、泌乳量が豊富であることで、牛、山羊、羊などは長い年月をかけて改良、淘汰されていったと考えられている。
牛は全世界で12億頭飼育されていて、そのうち2.3億頭が乳牛で4.7億tもの牛乳が生産されているが、羊は11.5億頭に対して乳生産量は800万tにしかすぎず、牛がいかに乳生産量が多いかが分かる。ちなみに山羊は4.5億頭で1000万t、水牛は1.2億頭で5000万t、豚は8億頭、馬は6600万頭、ロバは3900万頭、ラクダは、1680万頭、ラバが1420万頭飼育されているそうだ。
獣性の違いによる特色:
牛乳は、乳量が多くチーズ作りの条件を備えていて、主成分は水分、たんぱく質、脂肪、糖質、無機質(ミネラル)、ビタミン類などで1リットルの牛乳から100gのチーズが作られる。
山羊乳は、最も人乳に近いと言われていて、フランスでは離乳食に利用される程生活に密着している。イタリアでは妊婦にシェーブルを食べさせると聞いたこともある。乳にカロチンの含有量が少ないためにチーズの色が白いのが特徴。
ちなみにミルクが白く見えるのは、カゼインミセルと脂肪球が光を反射しているからだけど、脂肪球を取り除いた脱脂粉乳でも白く見えるので主な要因は、カゼインミセルとのことだ。
羊乳は、乳固形分が一番多いのでチーズの歩留まりが高くチーズ作りには適している。
水牛乳は、乳脂肪分が牛の2倍ありカロチンが少ない。また乳房が泥水に浸かっていることから乳中の微生物の種類が風味形成に大きく寄与していると思われる。
カゼインたんぱく質と乳清たんぱく質の違い:
乳を凝固させたカードの主成分はカゼインたんぱく質で、それから分離した水分であるホエーに含まれるものは乳清たんぱく質でこのふたつには大きな違いがある。分離したカードに含まれるカゼインたんぱく質は、酸凝固し、またレンネット凝固するが熱凝固はしづらいのに対して、ホエーに含まれる乳清たんぱく質は、酸凝固やレンネット凝固はしないが熱凝固をする。
カゼインタンパク質と乳清タンパク質についての詳しい説明はミルクの館を参照して下さい。
この性質を利用して作られるチーズがブロッチュ、リコッタやイエオスト。イエオストはキャラメルのような褐色をしているが、それは熱を加えることでたんぱく質が褐色に変化するメイラード反応によるものだそうだ。写真は、山羊ミルクのカードとホエーに酢をいれて酸凝固するかどうか実験してみたもの。左がカードでこちらは凝固しているけれど右のホエーはそのまま。ホエーは臭いが気にならなければ顔を洗ったりするとお肌がツルツルになるらしい。飲んでみるとちょっと酸味のあるプレーンな味がする。
さてさて、本日のチーズ。
まずは、ブロッチュAOCとリコッタ。カップに入っているのがリコッタ。リコッタは、イタリアのフレッシュタイプで牛乳製。MGは不定で非熟成。味わって食べると言うタイプではないけど、滑らかで、さっぱりとした味。ブロッチュAOCは同じくフレッシュタイプでフランス産。これは羊乳でMGは40〜51%の非熟成。これは季節もので4月の末頃まで。コルシカ島のホエーを使っているそうだ。フルフルっとした食感で甘味とほんのりとした酸味にコクがあって美味い。季節の終り頃にあたるのでほんのりと苦味が後に感じられた。ブロッチュとリコッタを混ぜて食べたみたりしたんだけどそれも美味かった。ジャムとかをつけるのもいいけど、スパイスとハーブを混ぜてサラダドレッシングにしてもよさそうだな。
次に行く前に今日のワインを紹介。今回もブラインドティスティング。
Bourgogne Pinot Noir Nicolas Potel 2003とCasa Lapostolle Cabernet Sauvignon Rapel Valley 2003。私は香りではよく分からなかったのだけど、味と色では区別はすぐに分かった。カベルネの方が濃いルビー色だし、飲んだ時に香るカシスとかのスパイシーさですぐわかる。最初に飲んだときはちょっと冷えすぎていたのだけど、常温に戻るにつれいい香りがして美味い。チリのラペルバレーで作られているもの。
ピノノワールの方も今まで飲んだ中ではとても力強い感じがしてなかなかいい感じだったな。このピノノワールは樹齢55年位の老齢したぶどうの樹から収穫したものを使っているそうだ。
今日のパンは、いつもと違って、久茂地にあるファリーヌのパン。最近あちらこちらのレストランでも使われているそうだ。宗像堂のパンとかに慣れているとなんとも柔らかいなと思ったりする。
さて次は、見るからに美味そうな、ヴァルデオンとロックフォールAOCの青カビチーズ。
ヴァルデオンは、スペインの青カビタイプで牛乳製。MGは45〜50%で熟成は2カ月。表面の葉はオオカエデ。いづれDOPチーズになると言われているそうだ。これは美味い。滑らかで口に含むとキノコの香り(私は干し草の香りのような気もしたけど)が鼻に抜けて塩もちょうどいい感じ。バランスのとてもいいチーズだと思う。皮の部分もちょっとシャリっとして美味い。
ロックフォールAOCはフランスの青カビタイプでこちらは羊乳製。MGは52%で熟成は3カ月。もともと塩は強いのだけど、ヴァルデオンと比べるとかなり塩っぱく感じる。ちょっとざらっとした食感もあるけど、食べてると滑らか。羊なので独特のゴーティフレーバーが口に広がる。
トム・デ・ボージュAOC、オッソ・イラティAOCとフロマージュ・ド・シェーブル・タランテーズはブラインドティスティング。写真では色が調整してあるので違いが分かりやすいのだけど、実際、切られたものの色の判別はちょっと難しかった。写真左では、奥からオッソ・イラティ、シェーブル、トム・デ・ボージュの順番。皿に乗っているのは、奥からオッソ・イラティ、トム・デ・ボージュ、シェーブルの順番。
私はシェーブルはすぐに分かった。ゴーティフレーバーが決め手かな。はごろも牧場(山羊牧場)の臭いがするんだものな(^^ このフロマージュ・ド・シェーブル・タランテーズはフランス産。山羊の乳は季節によって脂肪分が変化するのでMGは不定。熟成期間は8カ月と長い。ちょっとざらっとした食感が最初はあるけど滑らかで塩もちょうどいい。とても上品なシェーブルだと思う。
オッソ・イラティAOCは、フランスのピレネー地方のセミハードタイプで羊乳。MGは50%で熟成は60日以上。やや弾力のある歯触りがあり滑らかな食感。クセがなくさっぱりとしていて優しい味で食べているといい感じで塩が口に広がる気がする。透明感のある黄色が印象的。
トム・デ・ボージュAOCもフランスのセミハードタイプだけど、これは牛乳製。MGは45%で熟成は2〜3カ月。タリーヌ、アボンダンス、モンベリアードという3種類の牛だけに、自然の牧草と干し草だけを与えサイレージ(サイレージとは発酵飼料のことで、酪酸発酵を起こしたりカビの発生が起こり乳質に悪影響を与えることが多く、フランスAOCのハード系やスイスのハード系でも使用禁止が多いのです。)などは使わない。また120日間はアルパージュ(放牧)することになっているそうだ。そして乳は殺菌しない無殺菌乳。ちなみに無殺菌乳はフランス語ではLait Cruと言うが、これを直訳すると生乳だけど、もし試験で生乳と書くとバツ。無殺菌乳が正しい。
表面がとても綺麗なブラウンの色をしているのが印象的。これも滑らかでクセのない味。ちょっとキュキュツとしたような口当たりがするかな。
最後は、國場先生が、はごろも牧場のピンザブランを約1カ月の間、3日に1回15度に割った泡盛でウォッシュしたもの。実は通常のピンザブランではなくて3カ月くらいたった青カビが繁殖して縮んだものがベースなのでホントのピンザブランをウォッシュしたものとは言えないのだけど、青カビがあったとは思えないほどいい色合いをしている。切ってみても中心部はほんのり白いけれど皮に向かっていい色をしている。食感はセミハードと言った感じだけど噛むと滑らかさもでてきてなかなかいい感じ。次回はぜひ普通のピンザブランで挑戦してもらいたいと思うな。
本日のサラダは、リコッタとそらまめのサラダ。白とグリーンが見た目にもとても爽やかで美味しい。
今回のデザートは、私が持ってきた、津嘉山かぼちゃの丸ごとプリン。南風原の津嘉山かぼちゃは有名で東京ではこの時期、一玉5000円とかの高値だったりするそうだ。今回は、山羊みるくとヨーグルトを半々に卵と砂糖に少量のシナモンで作ってみたけど、もうちょっと蒸した方がよかったかなぁ。余ったプリン液にカボチャを裏ごししたペーストをカラメル代わりにしたんだけど味はよかったみたい(^^
詳しくは南風原かぼちゃの丸ごとぷりんとかを見てね。
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Comments
かぼちゃプリン、おいしかったです!皮までまるごといただきました。この時期のかぼちゃって水っぽいのですが、津嘉山のはほくほくしておいしいんですね。
Posted by: ユリ | April 26, 2006 02:47 PM